Introduction

中野 香織
著述家、株式会社KAORI NAKANO代表取締役

イギリス文化を起点とし、ダンディズム史、ファッション史、モード事情、ラグジュアリー領域へと研究範囲を広げてきた。日本経済新聞など数媒体で連載を持つほか、企業のアドバイザーを務める。著書『「イノベーター」で読むアパレル全史』(日本実業出版社)、『ロイヤルスタイル 英国王室ファッション史』(吉川弘文館)、『モードとエロスと資本』(集英社新書)ほか多数。東京大学大学院博士課程単位取得、英ケンブリッジ大学客員研究員、明治大学特任教授、昭和大学客員教授などを務めた。

http://www.kaori-nakano.com

Kaori Nakano

地方社会と「新しいラグジュアリー」 - 〈人間らしさ〉を肯定する非-合理的な情熱

本書は、国際的にみて現在のラグジュアリーがビジネスとして一部で肥大化し、本来的なクリエイティビティや情熱ではなく、むしろ市場を見据えて世界戦略的にマネジメントすべき企画型の商品やサービスになっていることを指摘しています。そして中野氏は「新しいラグジュアリー」の文脈において、今後の変化を見据えていくのであれば、「新しい風景」のつくり方に意識を向けることが不可欠である、と述べておられます。本書から一部を抜粋します。

“2015年あたりから、それ以前に「ラグジュアリー」として流通していたものがもはや豊かには見えなくなっているという現象が増えてきました。さらに世界中がコロナ禍に入った2020年以降は、従来型ラグジュアリーと手を携えていた世界が急速に時代と合わなくなっています”(48P)

“供給側がつくる世界観だけではなく、購買者側の背景もすべて含めた全体的コンテクストの中でラグジュアリーを考えることが必須に”(71P)

であるとするならば、コンテクストの形成とともに〈新しいラグジュアリー〉が代入される相対的な位置関係から、これからの地方社会やローカル文化、あるいはそのプレイヤーが目指すべきひとつの「かたち」がパースペクティブのなかに、あるいは本書が提案する「もうひとつの在り方」として見えてくるのではないでしょうか。
著者の中野香織氏にお話を伺いました。

  • 阿部

    では、本日は宜しくお願い致します。まず最初に、今回中野さんと安西さんがご執筆、出版されました新書、「新・ラグジュアリー」を拝読させていただいたわけです。で、国内の地方都市、あるいはローカル社会においても非常に示唆に富む内容だったと強く感じています。私自身も基本的にローカルにポジションをとっていて、その今後を考えていかなくてはいけない立場でもあります。現在のところ、執筆者でいらっしゃる中野さんに何か、反応はありましたか。

  • 中野

    たとえば内閣府の地方創生局からお声が掛かりまして。内閣府、永田町合同庁舎まで行ってきました。

  • 石井

    大きな反応があったんですね!!

  • 阿部

    素晴らしいことですよね。

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